第82章 臨市の人ではない

阿部蓮太郎は横目で一瞥すると、手を上げて部下に合図し、犯人の拘束を解かせた。

「こういう時はな、回りくどいのより、手っ取り早いほうが効く」

男の前まで歩み寄り、阿部蓮太郎は足を上げる。次の瞬間、傷口のある手首を容赦なく踏みつけた。

激痛と、逃げ場のない圧力。男は堪えきれず、喉が裂けるような悲鳴を上げる。

「この稼業じゃ口が堅いのは普通だ。だが――死ぬ直前でも、その口を閉じていられるか?」

言い終えると、阿部蓮太郎が手を上げる。合図を受け、山下隆馬が即座に拳銃を差し出した。

阿部蓮太郎は受け取るなり、無駄のない動きでスライドを引く。黒い銃口が、男の右手首を正確に捉えた。

男は銃口...

ログインして続きを読む